理系書店員のひとりごと

水環境に興味があり「技術士」を目指す書店員のブログ。将棋アマ5級程度。日本手相能力検定3級。マラソン元サブスリー。トライアスロンはそこそこ。桑名七番勝負1回戦敗退。

0001_「手と目と声と」~あえて「旅」の本として読む

1.旅とは

2.旅本の代表作

3.今回の作品について

 

1.旅とは

 旅とは、

● 日常から遠く離れ、気分や、ときに自身の価値観までも一新してくれるもの。

● 心身ともにクリエイティブにしてくれて、多くの場合は生きる糧ともなるもの。

● 人生にとって必須ではないけれども、無いと物足らないスパイスのようなものでもある。

 などと言われています。

人生はよく旅に例えられますが、一方で、旅そのものが人生を変えることもあると言われます。

 

2.旅本の代表作

 旅本として代表的なのは、 

●「深夜特急」 (沢木耕太郎 著)などが日本ではもはや説明の必要のないほど有名で、

●「八十日間世界一周」(ジュール・ヴェルヌ 著)などは世界的に有名なところです。

●「アルケミスト―夢を旅した少年」(パウロ・コエーリョ  著)も同様に有名です。

●「ASIAN JAPANESE―アジアン・ジャパニーズ」(小林 紀晴  著)は個人的に好きです。

 

3.今回の作品について

 

 しかし、ここで紹介させていただくものは、知る人ぞ知る本ではありますが、旅本としては全く認知されていないだろうものです。

  

それは、ズバリこれです。

「手と目と声と」 灰谷健次郎 著 (角川文庫)

 まさかの一冊だったかと思います。いかがでしょうか?

     

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   <本の内容(ほぼ裏表紙より引用)>

沖縄を旅する少女の心情を綴った「手」。

インドネシアの子供たちの澄んだ瞳が印象的な「目」。

障害を持つ子供たちが内に秘めた豊かな世界を描き出す「声」。

他「水の話」を収録した宝石のような四編の小品集。

 

 著者の灰谷氏は、17年間の教師生活の後、沖縄・アジアを放浪。その後、作家活動に専念されて発表した「兎の眼」(1974年)は、今なお多くの読者に読まれています。

このほか「太陽の子」「天の瞳」が特に代表作と言われており、それらは今回ご紹介させていただく「手と目と声と」よりもずっと有名かと思います。

 

 灰谷作品の特徴としては、どれも子どもの目線で描かれており、大人が忘れがちな、きれいな気持ちを思い出させてくれます。よくこれほどまで子ども(そのもの)にせまれるなと心動かされるばかりです。

 

 さて、この四編のなかで、いわゆる『旅』に該当するお話は、「手」と「目」であります。

 前者の「手」は、女生徒が先生にお手紙を書く形式でお話が進んでいきます。日本の高校生にとって旅とは、不安と新鮮な気持ちとでいっぱいなものかもしれません。特に船旅は、電車や飛行機などの他の移動手段にはない、なんとも言えない不思議な魅力があります。それこそ、“どこかさびしい・・・自分の魂からもはなれていくような、なんともいいようのないさびしさ” があるのかもしれません。子どもの目を通して見たものは、読者にとって(大人であったとしても)、きっと新鮮な景色として映ることでしょう。

 灰谷作品の多くは共通したテーマがあります。後者の「目」でも同様ですが、新鮮な気持ちと同様に、チクリと胸に刺さるものも同時にあったりして、一瞬読者を戸惑わせることもあります。このようなことは、やはり、本を媒体に子どもの目を通して見るから、大人になった今でも再度味わうのかもしれませんし、気づき、学ぶことができるのかもしれません。

 

 今回は、特に「旅」をテーマに、あえて灰谷作品から『手と目と声と』を紹介させていただきました。味わいのある作品としては、残りの二編、「水の話」や「声」も、これら以上にメッセージの強いお話ですが、これらについてはまた次の機会にお話させていただきます。