理系書店員のひとりごと

水環境に興味があり「技術士」を目指す書店員のブログ。将棋アマ5級程度。日本手相能力検定3級。マラソン元サブスリー。トライアスロンはそこそこ。桑名七番勝負1回戦敗退。

003_「利休にたずねよ」

 この書籍は、PHP文芸文庫から2010年に出版されたものです(※1)。先日の本紹介(002_「日日是好日」)でも触れたように、当時は自身の内面を見つめることに特に時間を使っており、その入口として茶道に関する本もいくらか眺めるようになっていた頃だったので、この本に出会ったときの衝撃は今でもよく覚えています。

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 衝撃というのは、出会った時期のこともありますが、他には次の3点があげられます。

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<「利休にたずねよ」の衝撃3点 >

・最初が利休切腹の日からはじまっていること。

・一章ずつ時間を遡り、最後に利休の茶の原点が明かされる構成であること。

・茶と・・・女!?

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※1:作品としては、2008年にPHP研究所から刊行されています。第140回直木賞受賞作。市川海老蔵主演で映画化もされており、2013年12月7日に公開されました。

 利休の茶の原点となるものがどの章にも伏線として書かれており、周囲の勘の鋭い人たちはそれに気づくもののそれ以上に踏み込めず、利休に対して時に歯がゆい思いもしつつ、場面は進んでいきます。サスペンス小説の謎解きのような感覚でワクワク・ハラハラしながら読み進められるので、いわゆる「千利休」「茶道」というイメージから、普段ならばこの分野は難しいなと感じる人もページをパラパラめくっていけると思います。茶の湯そのものの魅力、利休や秀吉はじめとした歴史上の人物の魅力と・・、何より著者の山本兼一氏の仕掛け(伏線など、上述)に引き込まれていきます。この時代の小説で、合戦以外のものを題材としてここまで面白いものはなかなか無いのではないかと思います。

 個人的には、中盤の「野菊」という章が好きで、秀吉と黒田官兵衛、そして利休との三者のやり取り(駆け引き)が見ていて面白いと思っています。歴史上の人物の中でも特に天下人というのは、茶の湯ひとつの見方も並ではないようですが、そんな人物が語る茶の効用についての話は、現代の私たちにとってもこの上ない学びになります。ただ、秀吉もそれだけの人物であっただけに、余計に利休の中の何物かに執着することになり、結果、利休を死に追いやったのであろうと思います。

 最後に、タイトルであるこの「利休にたずねよ」ですが、作者は利休に何を「たずねよ」と呼びかけているのでしょうか?これについては、一人ひとり答えは異なるところでしょう。巻末の解説には、宮部みゆきさんの《解》も添えられてあります。読者の皆様は何とお尋ねになるでしょうか?