理系書店員のひとりごと

水環境に興味があり「技術士」を目指す書店員のブログ。将棋アマ5級程度。日本手相能力検定3級。マラソン元サブスリー。トライアスロンはそこそこ。桑名七番勝負1回戦敗退。

0004_霧のむこうのふしぎな町

 子どもができて、ふと自身の子どもの頃に想いをはせた時、この本が浮かんできました。初版は1975年で、ジブリ作品の「千と千尋の神隠し」に影響を与えたといわれているファンタジーの名作です。講談社 青い鳥文庫は、本書のほかにも、クレヨン王国シリーズが好きでよく読んでいました。そちらはまたの機会に…。

霧のむこうのふしぎな町 柏葉幸子(1975年 [新装版は2004年] 、講談社 青い鳥文庫

 

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 1m先もぼんやりかすんでしまうほどの霧の中でふと気がつく。ふしぎな感覚を確かめながら歩きだすうちに、幕が上がるようにさっと霧が晴れていった。目のまえに小さな町があった。・・・

 有名な「雪国」(川端康成 著)の冒頭を思い出させるようなはじまり。何かがはじまる、素敵な予感を胸に本をどんどん読み進めてしまいます。小さな町のいっぷう変わった人、動物やモノたちに囲まれて、いろんな経験もして・・・、私も主人公の女の子リナと一緒に夏休みを過ごしたような、そんな気持ちになりました。

 リナは、はじめて訪れたこの町でいろんな人たちに出会い、いろんなお店で働くのですが、この小学6年生の女の子が働く姿を見て、今さらながら働くことのありがたさ、大切さを感じたりもしました。もっとシンプルに考えてもいいんだとも。本書では、働くから見えたり出会えたり、気づいたりすることも多くあり、いつの間にか私も主人公のリナになって、ピエロのかさを持っていろんな出来事を楽しむことができました。

 通りをケンタウロスが走る。ボートを抱えた小人たちがよちよち歩いていく。どこかの国の王妃、王子様がやってくる。ゾウもどかどか走ってくる。おかし屋さんの、食べても食べても太らないおかしは、今世の中に出てきたら世界中で大ヒット間違いなしだと思う。私もぜひ持ち帰りたかった。

 ところで、ファンタジーといえば、「ハリー・ポッター」シリーズ、「ダレン・シャン」シリーズ、「床下の小人たち―小人の冒険」シリーズ(『借りぐらしのアリエッティ』の原作)、「指輪物語」などなど、海外ファンタジーの方が昔から有名で、それらがまず頭に浮かぶのですが、本書はそれらに負けない魅力的な作品です。海外ファンタジーのように壮大・・とはいうわけではありませんが、ふしぎな町の素敵な住人たちや訪問客が魅力的で、いろいろな風景も詰まっています。それに英米のものと違って、とてもすんなりと話に入っていけるのも特徴だと思っています。それもまた、素敵な住人たちのせいかもしれません。そう、まるで小さな魔法がかかっているかのような出来事の数々もふくめて。当時、日本のファンタジーも面白い、と本当に感じた一冊でした。